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医学、雑学、ライフハックなど。「こいつ”使える”な」と思われるような記事を書いていきます。読み方はご自由に。

外来の傀儡とならないためのガイドライン_20210918

界隈で話題の外来の待ち時間議論について問題を解体してみました。

 

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▼目次

キーワード:外来、病院、診察、診療、待ち時間、捌く、回す、回転率、律速

 

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医学生向け記事

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待ち時間が長すぎる!

事の発端はこの方のツイート。

 

 

 

外来は戦場!

医療者側からのご意見がたくさん集まりました。リツイートやいいね数に比べて引用リツイート数が半端ないですね!^^

 

 

 

 

 

 

 

 

単純に待たされるのがつらい。自分が待たされることは患者を待たせることになるので。

 

 

 

 

 

いつまで争い続けるの?

 

下の記事でも触れましたが、SNSの普及により医療者の化けの皮が剥がれたというか、普通の凡人だなと思う機会が増えました。コロナにより、医療者の発言が権威を持ってしまったのも影響していると思われます。

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news.yahoo.co.jp

 

日本において医療マネジメントが未発達であることが挙げられます。マネジメントの欠如は、病院に限りません。日本の組織(企業)では「足りないリソース(資源)を気持ちで補わせる」「全体的問題を個人の努力に押し付ける」という日本的精神論が根付いています。

近年、医療者は、医療のレベルや知識の向上に費やす時間よりも、患者への説明、同意書の作成に膨大な時間を費やし、さらに接遇面でも高級ホテルやレストランなみの対応が求められるようになっています。 医療もサービス業であり、顧客満足度は重要ですが、医療は他のサービス業とは異なり公共性が強く、しかも病院側が価格を決定することができません(自費診療は別ですが)。 通常のサービス業のようにお金さえ出せば高度なサービスが提供されるという状況にありません。しかし、このことがお金を出さなくても高度なサービスを要求していいという誤った状況を作り出しています。

 

 

 

 

 

www.m2plus.com

令和2年度から初期研修医の一般外来研修が必修になりました.多くの卒後研修病院では外来研修の本格的な実績がなく,指導医,研修医とも何をしたらよいか困る場面が増えていると思われます.そこで外来研修をこれから始める初期研修医を読者のターゲットとして,初期研修医の外来研修のガイドとなるべき書籍を刊行することにしました.

とのことなので、数年後は状況が変わってくるかもしれません。

 

 

解決に向けての歩み寄り

 

この意見に対して、個人的に考えたことを書きなぐってみました。

 

医師を増やす

まったくもって同意です。増やしてください。

 

 

患者数を減らす

病院経営者や開業医にとっては患者=お客様なので、多いほうが嬉しいものです。ですがこんなのあくまで経営者の目線で、患者や定額で働かされてる医者にとっては知ったこっちゃありません。どうすれば患者数を減らせるか考えてみましょう。

 

 

他の医療機関に紹介する

一機関あたりで抱える患者数を減らすには、余裕のある医療機関へどんどん紹介してしまえばよいのです。紹介先の選定、情報提供書の作成などで一時的な時間的負担は増えますが、診察終了後の空き時間にコツコツやっていけば、うまく外部へ散らし、医療時間の配分をならすことができます。

 

しかし、紹介したくても紹介できない人が多いため、今このような状況に陥っているわけです。たとえば、大きな病院でしか扱ってない検査や治療は枚挙にいとまがありません。よって、設備の整っている大病院は抱える患者が増えていきます。

 

検査や治療が必要なときだけこっち来て方針は書類作成の無駄な作業が増えるばかりで現実的ではない。他機関のカルテや検査結果などを自由に参照できるシステム構築がされれば問題解決できそうですが、、、まぁ無理なんでしょうね。

 

大丈夫と思って手放した患者さんが、予想外の状況悪化により「戻ってくる」場合もあります。そうすると、手放していた間の経過がよくわからなくなるので、だったらずっと自分が見ていた方がよかったなとなるケースもあります。

 

他にも、遠方で通院できない、なんとなく大病院の方が安心といった患者さん側の理由で通院を続けている方は結構おります。こういった方を頑張ってどこかに紹介しようと時間を割くくらいなら、黙って診察をしたほうが双方のためになります。

 

このように、「他の医療機関に紹介する」ことによる「患者数を減らす」手法にはある程度のリスクを伴います。

 

 

 

再診間隔を延ばす

 

「1ヶ月毎に来てください」と「半年に一回来てください」とで比較すると、外来の延べ患者数は大きく変わります。先の例だと1/6倍に減るわけです。

 

患者数を多く抱える中核病院は「安定している」とみなされた方の受信間隔はなるべく延ばそうと苦心しています。ですが、延ばしたくても延ばせない状況はいくつかあります。

 

まず、処方数の縛り。都道府県によって一回に出せる数が決まっている処方薬があります。たとえば、睡眠薬など、安易に大量に出してしまうと色々と事故が起きる恐れがあるものが対象になってます。

 

これらの処方が必要な形には薬が不足しないよう定期的に受診していただく必要があります。もちろん、基本的に症状は安定しているので、1回あたりの診察時間は短くすむ。こういった方を事前にピックアップできれば「0.5人分」として予約枠に入れるなど出来てなどよいかもしれません。今の予約システムにはそこまでの機能がありません。

 

 

次に、診察間隔を延ばすことが逆効果になる懸念。

症状安定につき、かといって受診しなくていいよとも言えない病態の方は1年フォローとしている場合があります。これも基本的に症状は安定しているので、変わりないことを確認するだけでよいため診察時間は短くできます。

 

しかし万が一、見逃しがあると次の一年間後まで放置されてしまうことになってしまう。よって、一回あたりの診察の責任が大きくなります。何か異変があったら予約外で受診してねと言っても、自覚症状なく進む病気だってたくさんありますからね・・・。

 

また、患者さん側から心配だからまめに診てほしいというニーズもあります。こういった方の診察間隔を無理に説得して延ばしても、予約外で受診することになる増えてしまい、外来のコントロールが難しくなる懸念もあります。

 

予約人数は少なくても予約外受診が多ければ総数は変わりません。むしろ、予約外の方はこれまでの状況の確認だったり、定期検査の抜け漏れだったり、定期受診に比べて余計に時間がかかってしまう場合が多いものです。

 

上記の理由で、「診察間隔を延ばす」ことによる「患者数を減らす」手法にもある程度のリスクを伴います。

 

経営的な意味合い以外にも、患者数を減らしたくても減らせない理由があるのです。

 

 

 

待ち時間のアナウンス

 

なお、現在もメールやスマホアプリで診察直前になったら呼び出すようなシステムを運用している施設はあります。ノウハウを共有して広く普及すればよいですね。

 

 

外来を”回す”ために医者が出来ること

上記の理由で、患者数のコントロールが難しい施設で定額で働かされてる医者にとっては、一人あたりの一回あたりの診察がスムーズにいくように頑張る方へコストをかけていくほうが建設的でしょう。

 

 

 

優先順位をつけるトリアージ能力

 

 

 

頼れる人に頼る

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「緊急性はなさそうなんですがよくわかんないので先生の外来の時に回しちゃいました〜(テヘペロ」「これは○○だね。こういう人は△△するといいよ」「アザッス!」みたいなやりとりができるから医局制度もそこまで悪くはないですよ。

 

ですが、頼ることのできない状況だってあります。

 

現状把握スキル

 

 

 

意思決定の速さ

 

 

 

 

 

 

行動を素早く

 

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振り返りと計画性

 

 

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多少のタイムロスは覚悟の上、どこかで意図的に余白時間を作ると、結果的に早くなる気がします。

 

次の外来の予習だったり、今日の復習だったり。経過がごっちゃごちゃになった症例は気づき次第サマリーを作成しておくと今後の診療に大いな助けとなります。紹介するときにもそのまま流用できるのも良いですね。

 

こういった症例をピックアップするためには「カルテバックお願いします」とスタッフに呼びかけることが大事。自分の頭だけでは覚えてられないので、記憶保持を外部に委託する。

 

(早く終わった~)とゆっくり休憩したい気持ちをグッと我慢して、コツコツ振り返る習慣は後々の時間節約につながると思ってます。一種の投資ですね。忘れてから思い出すのは大変なので、記憶が新しいうちに、やれるうちにやっておく。将来うまれる余裕はさらなる余裕を生むはず。

 

 

忙しい救急外来で、本人や家族に既往歴や内服薬をちんたら聞くより、とっととお薬手帳をもらった方が早いと学びました。何を飲んでるかだけでなく、どこに通っているか、最後に受診した日はいつか、あと手帳の管理の仕方などから本人のキャラクターも推し測れます。

 

www.joystyle.net

 

外来やってみて迷うのが「次にいつ来させるか」なんですよね。救急外来みたいに翌日受診してねとはいかない。変わりなければとりあえず同じ間隔にしとけばいいんだろうけど、微妙に悪くなってそうな時にどうするか…。

 

また、再診日を決める際に厄介なのが「次に自分がこの病院に来るとは限らない」ことがしばしばあること。若手の医局人事だとまま起きうるもの。丸投げみたいな感じに思われてもイヤだし…。担当医師が変わると良くなってるか悪くなってるか経過の比較しづらいから、ちゃんとカルテに記載しとかないとなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今後も更新していきます。

 

2021/09/18 約19300字

2022/01/22 更新。約19600字

2022/02/20 更新。約20300字

 

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