ぐら子 glaucoma を語る.その2
▼昨年の
世界緑内障週間の話題から,昨今の医師国家試験の解説が始まり,緑色の目をしたアニメキャラの話に帰着する感動的な文章を書きました.次は涙目フォルダを潤わしたい.
— かたぐら子 (@cat1021gla) 2019年3月14日
【世界緑内障週間】ライトアップ in グリーン運動を応援しています. - 白緑ωガイドライン https://t.co/zfVLZLJuhz
今年はシンプルにいきますよ~。
緑内障は、世界中の国で、中途失明の原因疾患として上位にランクされている重要な病気です。我が国でも緑内障は現在失明原因の第一位です。一方で、緑内障は、早期に発見し早期から治療を継続すれば、失明する可能性の低い病気になってきています。緑内障による失明を減らすには、出来るだけ大勢の人に緑内障という病気を知ってもらうことが大切です。
世界緑内障連盟 (World Glaucoma Association) は、毎年、3月に世界緑内障週間として、緑内障という病気の啓発活動を世界中で展開します。この期間のことを、世界緑内障週間World Glaucoma Weekといいます。 この期間、世界中で様々なイベントや啓発運動、イベントが同時に行われています。
緑内障は超慢性疾患。徐々に視神経がすり減っていき、視野が欠け、最終的には失明に至る病気です。自覚症状が出た頃にはかなり進行してしまっていて、慌てて治療を始めても手遅れになってしまうこともあります。
健康寿命が伸びたため、寿命より先に失明する時代になってきており、なおさら早期発見&早期介入が求められてきています。
その啓発運動が世界緑内障週間です。
今年は2020/3/8(日)~3/14(土)に渡って行われます。協力施設は「緑」にライトアップされ、夜空を照らします。
【つぶやき】
— 北海道新聞「みなみ風」 (@doshin_Mkaze) 2020年3月10日
8、9日と世界緑内障週間(8~14日)に合わせて五稜郭タワーが緑色にライトアップされていました。昨夜はほぼ満月の月もタワーに寄り添いきれい。ゆっくり歩いて帰宅しました(N) pic.twitter.com/St5bgH5KS6
柔らかな光で検診啓発 「世界緑内障週間」合わせ【岩手】|Iwanichi Online 岩手日日新聞社 https://t.co/z6V8aufpE9 #岩手 #奥州市 #国立天文台 #水沢VLBI観測所 #花巻市 #いしどりや酒蔵交流館 #グリーン #ライトアップ
— 岩手日日デジタルコンテンツ室 (@IwanichiMmk) 2020年3月9日
空と信濃川に写る満月。きれいですね。
— 【公式】ホテルオークラ新潟 (@HONiigata) 2020年3月9日
メディアシップは緑色にライトアップされていますがこれは【世界緑内障週間】に合わせてのライトアップだそうです。
色々な情報が溢れていますが夜空を見上げて少しリラックス、リラックス。 pic.twitter.com/UJ1qdGxKnU
多治見修道院染める緑 世界緑内障週間ライトアップ https://t.co/T8Rd2mafVa
— 岐阜新聞 (@gifushimbun) 2020年3月8日
3月9日、今月の満月と岐阜城。
— roku326/週末城グラファー (@Roku326_K) 2020年3月10日
薄雲がかかってぼんやりだったけど撮れてよかった。
①ライトアップ前の夕方の空と
②緑内障啓発のグリーンライトアップと共に pic.twitter.com/F5ZUSztdae
松本城、緑色に染まる 世界緑内障週間でライトアップ 【全文はこちら https://t.co/Fo8ZKnFfmq 】
— 北陸新幹線で行こう! 北陸・信越観光ナビ (@kankounavi) 2020年3月10日
本日3月12日(木)〜14日(土)はグリーンにライトアップいたします✨
— 京都タワー【公式】 (@kyototower_1228) 2020年3月12日
12日・13日は世界緑内障週間「ライトアップinグリーン運動」の一環として。
14日は #京都駅ビル さん、#ローム さんとの協調演出「ときめきプロジェクト」として、エリア一帯のイルミネーションをお楽しみいただけます🤗 pic.twitter.com/NoVYfnuytP
緑内障の早期発見訴えライトアップ 神戸・モザイク大観覧車:https://t.co/OUIOB9Seiv#神戸新聞 #ライトアップ pic.twitter.com/7oCweZ2BTF
— 神戸新聞 (@kobeshinbun) 2020年3月8日
世界緑内障週間(8~14日)に合わせ、高知城が緑色にライトアップ。今日までです。https://t.co/YWpdhJmVGp pic.twitter.com/j0WoqDWhIo
— 高知新聞 (@Kochi_news) 2020年3月10日
世界緑内障週間 ライトアップinグリーン運動❗️
— 出雲之國 社☆ガール (@izumono_shagirl) 2020年3月9日
出雲市内では以下のランドマークが対象です。
旧大社駅 3/8(日),3/14(土)
18:30~20:30
日御碕灯台 3/8(日)~3/12(木)
18:30~20:30
早期発見・継続治療・希望
40歳を過ぎたら眼の定期検診を! pic.twitter.com/c2eXNoDXpR
❇️岡山城ライトアップ✨✨
— atelier-jin (@JinAtelier) 2020年3月10日
岡山城が緑内障週間8~14に合わせ
緑色にライトアップ、大切な目が
いつまでの願いを込めて.....
{画像は前回特別ライトアップ}#岡山城 #ライトアップ #緑内障 pic.twitter.com/XRIaTSJkL8
綺麗ですねぇ~。映える。
まずはこういう病気があるということを知ってもらい、検診などでついでに目も見てもらおうかなと思う人が増えるとよいですね。検診の目安は40歳とされています。
今日から世界緑内障週間という事で今朝の朝刊に緑内障チェック表が全面に❗️
— rikka (@ZKMBALezZXIkrtC) 2020年3月8日
自覚症状のない人もぜひチェックしてみて欲しい。という私は進行していたらと思うと怖くてそっ閉じ… pic.twitter.com/bpPDM1Sm1H
真面目な啓発活動はこれくらいにして、後は好き勝手語りましょうか。
さて、眼の界隈でこの一年での大きなニュースと言えば…
『病気がみえる 眼科』の発行ですね!
病みえ眼科! 手に入りました!
— かたぐら子 (@cat1021gla) 2019年7月1日
チラッと読んだ限り、国試受かるだけなら過剰な情報量。余裕&興味がある人向けかな。やっぱこの科はイラストと相性が良いですね。 pic.twitter.com/it4Pgm6c3Q
多種多様の医療職向けにわかりやすく解説され、しかもお値段も手頃な大人気シリーズの眼科版です。これを読んでる医学生はもちろん買ったよな!?
専門書とはいえ、比較的とっつきやすいので、病気をもつ人、その家族が自身の病気への理解を深めるために読んでもよいかもしれません。
緑内障の治療といえば、まず目薬。残りの紙面は緑内障点眼薬についての与太話で埋めましょう。
緑内障点眼薬は作用機序で分けると、なんと10種類もあります(2020年時点)。作用部位は3つだけなのですがね。
二大巨頭はプロスタグランジン関連薬とβ遮断薬です。この2つを覚えれば緑内障初心者は脱したと言ってもよいでしょう。知りませんが。
プロスタグランジン関連薬は四天王
・キサラタン(一般名:ラタノプロスト)
・トラバタンズ(トラボプロスト)
・タプロス点眼液(タフルプロスト)
主だったものはこの4種でしょうか。
薬には薬品名と一般名があり、それらを逐一覚えないといけないのが大変です。これでもルミガン以外は一般名と共通している部分があるので覚えやすい方ですが。一般名だと、成分が「プロスタグランジン」からとって「プロスト」と語尾につきますね。
緑内障治療を始めるといったら、まずこの4種のどれかを使う眼科医が多いと思います。では、この4種間での違いはなんなの?というと、作ってる会社が違う…と歯切れが悪くお答えがなかなか難しいところがあるのですが、
上記のような違いがあるとのことです(他人任せ)(専門家に聞こう)!
ルミガンは四天王の中でも最強
ルミガンは効果の強さから重症な人に使われているイメージです。
ルミガンの名前の由来は、生みの親がアメリカのアラガン社ということしかわからりませんでした。ルミとはなんぞや。ルミナス(Luminous、Luminas)から来ているのでしょうかね。
キラッキラに輝くのは~ ルミナ~ス!
さて、効果が強いということは、それだけ副作用も強いということ。PG薬共通の副作用、PAP(プロスタグランジン関連眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)も強く出てしまうようです。
緑内障の点眼薬には「まぶたに色素沈着する」「まつ毛が濃くなる」などの副作用が出るものがあります。
— かたぐら子 (@cat1021gla) 2019年3月14日
(なんかこの人やけに目元が濃いな?)と思ったら緑内障の治療していないか確認してみるとよいでしょう! 思わぬ禁忌薬を防げるかも? #当直メモhttps://t.co/9TI3XYfKBx
眼の周囲の脂肪に作用した結果、目元に変化が起きるようです。溢れた液はなるべく拭き取ることで少し発症を抑えられます。患者さんとしては、やはり見た目に影響するのでこの副作用は無視できないと思います。
医師サイドとしても、眼瞼が硬くなるので眼圧が測りにくくなったり、上の瞼をひっくり返しにくくなったりと、あまり良いものではありません。どうにか改善されてくれればよいのですがね。
その一方で、キサラタンは安価かつ副作用が少ないと言われています。ラタノプロストとして配合剤にも多く用いられていますし、歴史が深いのでしょう。
すごくどうでもよい話ですが、キサラと聞くと遊戯王を思い出します。
緑内障という闇から救うキサラたん…といったところでしょうか(?)
自分だったら初手はキサラタンを使おうかな。
β遮断薬は全身に効く
・チモプトール(一般名:チモロールマレイン酸塩)
・リズモン(チモロールマレイン酸)
・ミケラン(カルテオロール塩酸塩)
・ミロル(レボブノロール塩酸塩)
・ベトプティック(ベタキソロール塩酸塩)
やや、薬品名と一般名が結びつきません! ロールと付くのが特徴ですかね。プロプラノロールやビソプロロールなど循環器科の薬の方がピンとくる人が多そうです。
眼科医はαやβに敏感である。しかし全身のことはわからぬ。
— かたぐら子 (@cat1021gla) 2019年8月8日
これらの目薬はβ遮断作用により、房水産生を抑制、つまり房水のinを減らす効果があります。
目薬とはいえ、全身に影響があるので、β遮断薬で悪化してしまう喘息、COPD、徐脈性不整脈、心不全などを持つ人に使う際は要注意です。喘息が悪化した原因が目薬だったという話はたまに聞きます。
ベ ー タ ・ プ ロ ッ カ ー (マ レ イ ン 酸 チ モ ロ ー ル) の 点 眼 に よ り
誘 発 さ れ た と 考 え ら れ る 気 管 支 喘 息 重 積 発 作 の 一 剖 検 例
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrs1963/28/1/28_1_156/_pdf
最悪死に至る、と…。
これらの目薬を使ってる方は体格によらずHR 60bpm以下に行くか行かないかくらいのかる~い徐脈な場合がけっこうある印象です。
徐脈の患者さんを診る際に、徐脈の原因となり得る内服薬の有無をチェックすることは重要ですが、β遮断薬の点眼は意外と盲点です。
— ひろ@循環器内科 (@hirotanpiropiro) 2019年5月28日
点眼だからと軽視されがちですが、β遮断薬の点眼が原因で徐脈性ショックになることが実際にあります。
逆にβ遮断薬の点眼を処方される際には脈拍数にもご注意下さい。
ちなみにαに関する緑内障点眼もあるのですが、こちらは遮断・刺激ともにあり色々と複雑なのでこの記事では割愛させていただきます。
αといえば、前立腺肥大症治療薬として用いられるα遮断薬によるIFIS(術中虹彩緊張低下症候群)も眼には馴染みが深いですね。
会員限定の記事ですが、薬剤師さんはこういうの敏感にすくい上げてくれます。
これも詳しくは割愛。
プロスタグランジン関連薬とβ遮断薬の二大巨頭のどちらか、あるいはどちらも使い緑内障治療が始まります。
しかし、どちらも使うとなると目薬を何回も差すのは大変ですよね。
目薬は、十分な効果を効かせるために、点眼の間隔を5分間以上は開ける必要があります。毎日毎日そんな何本も差していたら、目薬するだけで一日がすぎてしまうではないか!
そんな不便さを解消するために、世の中には配合点眼薬があります。
一個ずつご紹介。
ラタノプロスト=キサラタン。サラが訛って?、ザラに。
アバカムと語感が似ている。
トラボプロスト=トラバタンズのデュオ(Duo)って感じでしょうか。
トラバの後置き感が良いです。
・タプコム(タフルプロスト+チモロールマレイン酸塩)
ガッシュにこういう魔物がいたよなと思ってよく調べたらキクロプでした。
こんなヤツいたの覚えてる?
・ミケルナ(ラタノプロスト+カルテオロール塩酸塩)
カルテオロール塩酸塩=ミケランの配合点眼です。
ミケルと言えば、これもガッシュですね。
大塚製薬の目薬ですが、もしかして「痛みに負けるな」も大塚だっけ…とうきうきして調べたら別会社でした。負けた。
ザラカム、デュオトラバ、タプコム、ミケルナ。主だったプロスタグランジン関連薬+β遮断薬の配合点眼はこれら4種類です。
ルミガンの配合薬はまだ存在しないようですね。ラタノプロストが2回使われています。
配合点眼は他にも2種あり、炭酸脱水酵素阻害薬+β遮断薬という組成です。
・コソプト(ドルゾラミド+チモロールマレイン塩酸塩)
ドルゾラミド=トルソプトの配合点眼。
トルソプトは “trust(信頼)”と“optic(眼)”から由来されているようです。
チモプトールもチモロール+opticですね。
・アゾルガ(ブリンゾラミド+チモロールマレイン塩酸塩)
ブリンゾラミド=エイゾプトなので、エイゾ→エーゾ→Aゾ→アゾ?
緑内障点眼薬はいろいろあるけど私はアゾルガがお気に入り。なんか…こう……本を片手に叫びたくなる。
— かたぐら子 (@cat1021gla) 2019年10月3日
「アゾルガ」が供給停止になった際の関係者100割の心境を4コマにしました。 pic.twitter.com/aKmM4rQF9b
— かたぐら子 (@cat1021gla) 2020年3月12日
アゾルガは心のチカラが尽きて唱えられなくなりました…。
といった感じで、緑内障点眼薬は多種多様あります。これでまだ半分以下。
効果だけでなく、使い勝手やつけ心地やコストパフォーマンスなどなど気にすることはいっぱいです。勉強が進んだらいずれまとめてみたいと思います。
その他、緑内障の話題
篩板に掛かる眼圧とCSFとの圧勾配が視神経乳頭での神経障害と関係があるという論文があるよう。
【MRIを予定している方】
— doctorK★医師/眼科医/医療ライター/クラウドワーカー (@doctorK1991) 2019年10月17日
緑内障手術の中には目にステンレスの機械を埋め込むことがあります。緑内障手術をしたことがあれば伝えてください。
【医療者の方】
ステンレス製のインプラントで、3テスラまでのMRI検査は偏位せず安定であることが確認されています。今後は緑内障手術歴も訪ねてください。
やっと覚えたったわ pic.twitter.com/fMlgjpf8Zy
— まこ太 (@makota_wg) 2020年2月3日
・・・なんの記事でしたっけ?
緑内障は、世界中の国で、中途失明の原因疾患として上位にランクされている重要な病気です。我が国でも緑内障は現在失明原因の第一位です。一方で、緑内障は、早期に発見し早期から治療を継続すれば、失明する可能性の低い病気になってきています。緑内障による失明を減らすには、出来るだけ大勢の人に緑内障という病気を知ってもらうことが大切です。
世界緑内障連盟 (World Glaucoma Association) は、毎年、3月に世界緑内障週間として、緑内障という病気の啓発活動を世界中で展開します。この期間のことを、世界緑内障週間World Glaucoma Weekといいます。 この期間、世界中で様々なイベントや啓発運動、イベントが同時に行われています。
世界緑内障週間の応援記事でした。
後半戦がんばっぺ!(あと2日)
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